中国で延べ90億人が移動する春節の旅行先として、今、人気が高まっているのが県内の観光地。こうした海外の観光客を呼び込む新たな取り組みを強化しているのが天童市。最新の動きを取材した。
(リポート)
「樹氷を見るためのロープウェーには、雪が降っているのですが、その中でも多くの人がいて大変賑わっています」
春節の大型連休。蔵王にも海外から多くの観光客の姿があった。
(香港から)
「蔵王はすごく人気。だからわざわざ来ました。」
人気の理由は、山形が2025年の春節の旅行先で、人気急上昇部門1位に輝いたこと。
山形の人気が高まった背景には、あるアプリの存在があるという。
(中国から)
「中国で使っています。私もこれを見て来ました」
中国の若者を中心に人気のSNS・レッドノート。
蔵王に訪れたインフルエンサーなどが、樹氷の絶景写真をアップし、魅力を発信。
その投稿を見た春節客が、県内に次々と訪れている。
(台湾から)
「すごい! みんなの噂通り。1回来た方がいい」
県内の観光地に「追い風」が吹く中…。
(リポート)
「蔵王や銀山温泉などの人気が高まる中、インバウンド客の呼び込みをはかる動きが広がっている」
その一つが、天童温泉。
天童温泉では、この時期に訪れる客のじつに約半数が、中華圏からの観光客が占めている。
かつては、冬の間は宿泊客が少なく、ホテル業界にとってはとても厳しい時期だったというが…。
(DMC天童温泉 旅行事業部・鈴木誠人部長)
「インバウンド客がたくさん来てくれる時期になったので、閑散期から繁忙期に変わった」
ある旅館でこの日チェックアウトした宿泊客は、ほとんどが海外からの観光客。
この台湾からの家族連れは、前日に銀山温泉を訪れたそう。
(台湾から)
「雪がとてもきれい」
香港から来た別の家族は…。
(香港から)
「雪が降っているのを見たいから。そしてスノーボードをする」
この日は蔵王に行き、翌日は銀山温泉に行くそうで、なぜ、天童温泉に泊まったのかを聞いてみると。
(香港から)
「蔵王・銀山温泉に運転して行くので便利」
県の中央部に位置する天童温泉は、蔵王や銀山温泉など、主な観光地まで車でいずれも約1時間という立地。
これは、海外のホテルから観光地への移動時間と比べると「かなり短い」という。
天童温泉は今、この立地を生かして「県内各地へ向かう際の宿泊拠点としての存在感」を高めようとしている。
(DMC天童温泉 旅行事業部・鈴木誠人部長)
「みんなが行きたいと思う観光スポットがたくさんある。ちょうどその中間に天童温泉があるので、天童温泉をハブにして、いろんなところに観光を楽しんでもらえるようにやっている」
「拠点」となるために天童温泉が力を入れているのが、銀山温泉へのバスツアー。
銀山温泉自体は、宿泊できる人数が限られているため「天童に泊まって銀山温泉へ出かけてもらう」ツアーが人気だという。
「2月いっぱいはこんな形で予約が埋まっている」
天童温泉から毎日出発する銀山温泉バスツアーは、5年前に始めた当初は参加者が年間30人だったが、今では年間2000人。約70倍に増えた。
(DMC天童温泉・旅行事業部 鈴木誠人部長)
「個人でバラバラ行くのではなく、天童温泉に泊まっているお客をまとめて連れて行って、スムーズに安全に案内して、地域間での課題解決も一緒になってやっていきたい」
世界から注目される「冬のやまがた」。
オーバーツーリズムの課題もある中、海外の旅行客をどのように受け入れていくのが良いのか。
鈴木さんは「これからは観光地同士の連携が欠かせない」と考えている。
(DMC天童温泉 旅行事業部・鈴木誠人部長)
「お客も銀山温泉を楽しんでもらえる。銀山温泉はオーバーツーリズム対策になる。我々は天童温泉に泊まってもらえるという“三方よし”の形をしっかり作っていきながら、いろんな観光地で地域の人々と一緒になって、観光地域づくり・受け入れに取り組んでいきたい」
天童市が始めた取り組みは、いわば観光地同士の「役割分担」。
蔵王など「目玉となる観光地」と「宿泊」を受け持つ天童温泉が上手に連携することで、互いにメリットが出る。
天童温泉に限らず、ほかの観光地でも参考になる部分が多そうだ。