JR鶴岡駅前に小さなピザ店がオープンした。メニューを監修するのは世界にその名を轟かせた秋田出身の料理人の男性。その肩書きや店を監修したきっかけにも面白いエピソードがあった。
ユニークな外観が特徴のそのピザ店は、JR鶴岡駅近くの鶴岡市錦町にある。
オープンを翌日に控えた3月10日、店内ではメニューを監修する篠原秀和さんが、店長を務める小林さんとピザの仕上げ方などの最終確認を行っていた。
「このまま入れたらこの形になっちゃうから、ちょっと丸める」
実は、篠原さんの本職は「すし職人」。
東京で修行後、ほかの料理も勉強したいと24歳で単身イタリアに渡り、料理を学びながら24年間、すし職人として活躍してきた。
その間、アメリカの雑誌で「世界トップ100の料理人」に選ばれ、世界的デザイナーのプライベートシェフも務めた凄腕だ。
2022年に故郷の秋田・にかほ市に戻り、翌年、鳥海山を望む実家近くに飲食店をオープン。ミラノ時代に友人の母親から学んだ「ある味」が原点になっている。
(篠原秀和さん)
「友人のお母さんが作るイタリア料理がおいしすぎて、『勉強するならレストランでなく家庭料理だな』と思って。ラザニア・パスタ、トマトとニンニクとオイルの使い方などを学んだ」
現地でピザ職人の免許も取得した篠原さんのピザは、「現代風のミラノピザ」。
生地に空気を含み、溶岩プレートを敷いた窯で一気に焼き上げることで、もっちりとして、冷めてもおいしいのが特徴。
イタリア産チーズを使い、今回はディアボラやクアットロなど4種類のピザを監修した。
(篠原秀和さん)
「生地の粉はイタリアと北海道のものを調合して、水は鳥海山の水」
学生時代には酒田市内の高校に通い、妻の両親も鶴岡出身という庄内に縁がある篠原さん。
今回の監修のきっかけ、店のオーナー・齋藤さんとの出会いは、齋藤さんの会社にあった「ピンク色のドア」に一目惚れしたからなんだそう。
(篠原秀和さん)
「通りを通ったら、斎藤さんの会社の前に"どこでもドア"が置いてあった。『うわ、カッコいい』と思って、中に入って『売ってください』って」
(店のオーナー・齋藤于今さん)
「ここまで本気でほしいという人は初めてだったので、そこまで言うならどこに置きたいのか、秋田へ見に行かせてもらったら、鳥海山をバックに雄大な景色で『まさにここに必要だな』『ここに置かなきゃ』と思ってプレゼントで持って行った」
不思議に通じ合った男同士の友情の証は、同じドアを取り付けた店の入り口にも見ることができた。
そして、オープン初日の11日。
(利用客)
「SNSでオープンを知った。味にすごく期待している」
監修した篠原さんも厨房で腕を振るい、店内にはピザが焼ける良い匂いが漂っていた。
店はテイクアウト限定で夜だけの営業だが、噂を聞きつけた利用客がさっそく本場のピザを買いに訪れていた。
(篠原秀和さん)
「ナポリ風ピザはよくあるが、現代風ミラノピザは日本ではそんなにやっている人がいないと思う。鳥海山の水を使ったピザなので、一度試していただいて秋田・にかほ市の方にも遊びに来てほしい。秋田と鶴岡が"どこでもドア"でつながっている」
世界的すし職人が作る本場のピザは、鶴岡と秋田とをつなぐ架け橋にもなっている「粋な味」のピザだった。
ピンクのドアがつないだ本場のピザ。
初日の11日は37枚が売れたという。試食した記者は「お世辞抜きでおいしい」と言っていた。
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