今回初めてベトナムで作られた花笠まつりに使う「花笠」の試作品。これまで花笠は100%県内で作られていたが、海外で生産を進める理由は「花笠まつり」の存続にあった。
山形の夏の風物詩「山形花笠まつり」。
2024年夏、祭りに欠かせない「花笠」が足りなくなるという初めての事態に直面した。
まつりで使われる花笠の9割以上を作っている「尚美堂」。
この年末年始に、初めてベトナムで作った「花笠」の試作品を見せてもらった。
「実際持った感じ、これどうですか?」
「軽い!」
ベトナムで作られた「花笠」。
従来のものよりも少し軽く感じたが、それ以外は“見た目”も“手触り”も今までの「花笠」と大きな違いはない。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「本来であれば国産・県産のものを提供できればそれに越したことはない。ただ今後の先を考えた時に、十分に提供できなくなると感じた」
これまで100%県内で作られてきた花笠だが、今回、ベトナムでの生産を逸見社長が決めた理由は「深刻な作り手不足」にある。
尚美堂ではこれまで、飯豊町中津川で手造りされた「笠」に「花」をつけて花笠を作ってきたが、ピーク時に約30人いた作り手が高齢化によって6人にまで減った。
そのため2024年の花笠まつりでは、「花笠が1000枚も足りなくなる」という異例の事態となった。
危機感を持った逸見社長は、2024年の花笠まつりの直後、山形市や日本貿易振興機構・JETROに相談。ベトナムでの花笠生産に向けて動き出した。
首都・ハノイから車で1時間のザイタイ村で、「花笠」の試作を見せてもらうと…。
「すごい! すごい!」
この村では「ノンラー」と呼ばれる日よけの笠を日常的に使っていて、約200人の作り手が年間約8万枚を作っている。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「ヤシの葉とその中にタケノコの皮・ヤシの葉、その3枚を組み合わせている。それを一針一針縫っている」
その出来栄えにほれ込んだ逸見社長は、2025年の花笠まつり用に1500個の生産を依頼することにした。
(尚美堂・逸見良昭社長)
「正直安心している。もしかしたらベトナムの笠、もしくは代替えの布の笠が県産の笠以上に多くなるかもしれないが、花笠まつりを存続するためにはどうしても笠が必要、それが一番」
ベトナムで作られる1500個の花笠は、早ければ3月末に届く予定で、2025年の花笠まつりを彩る。
逸見社長が最後に語っていた通り、「ベトナムの笠」に加え「布製のカバー」をかぶせた代替品の笠も2024年に作られた。
「作り手不足を何とか乗り越えて、花笠まつりを次の世代につないでいくことが自分たちの責任だ」と、逸見社長は話していた。