あっと驚く芸術の話題。山形の風景を針と糸で表現する川西町在住のアーティストを取材した。12月1日からの個展を前にその魅力に迫る。
四季折々の鮮やかな山形の風景。
一見、写真のように見えるが実は全部“刺しゅう”でできている。
このリアルで美しい作品を作っているのは、クロスステッチアーティストの長澤聡さん(44)。
川西町で地域おこし協力隊として活動しながら、米沢市内の実家にアトリエを構え、創作活動に励んでいる。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「クロスステッチはその名の通り糸をクロスにして、バッテンにして、そこが1つの縫い目として完成して、それの集合体です」
わずか1ミリのマス目に糸を入れていくち密な作業。
長澤さんが今制作しているのは「夜空に浮かぶ美しい花火」。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「酒田の花火大会を作っている。もととなる写真を見つけて一目ぼれした。どうしてもこの作品を作らせてほしいと撮影者の方にお願いした。復興を願って作る作品にしたいと思って作っている」
写真をパソコンのソフトで図案化し、約80種類もの糸を使い分けてリアルな風景を描いていく。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「オレンジのところだけでも5種類くらい色を使っている。そうしないと写真に見えない。出来上がった作品を見て喜んでくれる人のことを思い出すと、続けてもっとみんなに見てもらって、驚いてもらって、喜んでもらいたい」
子どものころから裁縫が好きだったという長澤さん。
16年前、本格的に創作活動を始め「山形ステッチ」と名付けて山形の風景に特化して
作品を制作している。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「四季がはっきりしている場所なので、春らしかったり夏らしかったり、緑の鮮やかさが出てくるような風景が、刺しゅうにしても映えるのがいいところ」
ことし8月、その技術が認められ国際画廊連盟が選出する「グローバルアートマスターズグランプリ」を受賞した。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「全然想像もしていなかったので本当に驚きと嬉しさだった」
受賞したのは、紅葉が美しい秋のもみじ公園をモチーフにした作品。
自ら撮影した写真をもとに、1年半・約1500時間をかけて完成させた力作だ。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「池に反射するところが表現できたのは良かった。山形の美しい風景を絵でもなく写真でもない刺しゅうという形で広められるということは、僕にとってうれしいこと」
受賞の反響で展示会への出品依頼が多数寄せられ、2025年の夏に開かれるイギリスの美術展への出品が決まった。
刺しゅうで山形の魅力を世界に発信する長澤さん。12月1日から始まる川西町での個展で、ぜひ見てほしいという作品を見せてくれた。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「銀山温泉。『ガス灯ともる夕暮れの銀山温泉』という作品。今まで作った中で一番大きいサイズ。ガス灯ともる感じのノスタルジックな風景・雰囲気を、うまく表現できたと思って一番気に入っている作品」
90色もの色を使い繊細に表現された観光名所・銀山温泉。
まるで映画のワンシーンのような美しさを眺めることができる。
個展では、この銀山温泉を含めた13の作品で、訪れる人を「山形ステッチ」の世界へといざなう。
(クロスステッチアーティスト・長澤聡さん)
「刺しゅうという作品で山形を表現するというのはなかなか見ることができない。遠くから見ると絵や写真にしか見えないけど、近くで見るとしっかり縫い目がある。そこをしっかり見てほしい。作品の美しさを見てもらえるとうれしい」
どの作品も写真のような繊細な作品だった。近くで見てみたくなった。
近くで見ると本当に繊細でち密な作業を重ねて作品ができているということに驚く。
そしてあらためて、山形にはこんなに美しい風景がたくさんあるんだということにも気づくことができた。
長澤さんの個展は12月1日~14日まで、川西町のフレンドリープラザで開催される。
会場では長澤さんの制作風景も実際に見ることができる。ぜひ、山形ステッチの世界を堪能しに行ってみてほしい。