尾花沢市の銀山温泉では、観光客の増加に伴う混雑や渋滞など、いわゆるオーバーツーリズム・観光公害に悩まされている。市と銀山温泉組合は、12月から「日帰り客」を対象に、マイカー規制や来場者数の調整などこれまでにない対策をとることにした。
大正ロマン漂う街並みに時間を忘れ癒される尾花沢市の銀山温泉には、県の内外・海外から年間約30万人の観光客が訪れる。しかし...。
(銀山温泉組合・脇本英治組合長)
「イメージよりも人が多くて、ごちゃごちゃしていてお土産屋さんも混雑。『来てガッカリした』という声を聞いたりもする」
21日に銀山温泉を訪れると、多くの外国人観光客の姿があった。
週末にはさらに観光客の数が増えて温泉街が混雑することで、時にトラブルが起きることも...。
(銀山温泉組合・脇本英治組合長)
「旅館の駐車場への無断駐車によって宿泊客が駐車できない。宿泊客が停められなくなるので、しょうがないから真ん中に停める。そうすると日帰りの人が出られなくて、『帰れないんですけど』と電話がくる」
本来は、宿泊客しか停められない旅館の駐車場。
しかし、「少しでも温泉街に近い場所に」という日帰り客による無断駐車や路上駐車が相次いでいるという。
銀山温泉が最もにぎわう冬。脇本組合長が営む旅館「古山閣」も、来年2月まで週末の予約はほぼ埋まっている。
銀世界に光が広がる「冬の銀山」。魅力あふれる特別な時期だが、雪深いこの地域ならではのさまざまなトラブルも...。
(銀山温泉組合・脇本英治組合長)
「冬期間は日常的なことで、宿泊客はここまで下りてこない。日帰り客のトラブルが多い。一番温泉街に近いこの坂が、一番トラブルが起きやすい」
スリップした大型バスが温泉街に続く唯一の坂道をふさいでしまい、通行が不可能に。
雪道に慣れたドライバーにも起きてしまう冬の運転トラブルの1つだが、その怖さを知らない観光客がノーマルタイヤで訪れることもあり、トラブルが後を絶たない。
こうしたオーバーツーリズムいわゆる観光公害を受け、この冬、尾花沢市と温泉組合が動いた。
(尾花沢市・結城裕市長)
「銀山温泉をこれからも長い期間ずっと観光地として維持していきたいという思いで事業を進める」
12月23日からの期間、銀山温泉は日帰り客を対象に「マイカー規制」と「来場者数の調整」を初めて実施すると発表した。
具体的には、期間中に銀山温泉を訪れた日帰り客は、全員が温泉街から約2キロ離れた「大正ろまん館」に車を停め、有料のシャトルバスやタクシーで温泉街まで移動する「パーク・アンド・ライド」を行う。
日帰り客の対策は、まず尾花沢市が主体となって12月23日~1月6日まで実施する。有料のシャトルバスは1人500円かかる。
その後、1月7日~2月末ごろまでは、温泉組合が主体となって日帰り客の対策を行う。
同じくシャトルバスでの移動となるが、バス代と交通整備協力金としてこの期間は1人1100円かかる。
(尾花沢市・結城裕市長)
「冬場は夕刻からガス灯と雪の景観を楽しみたい方が集中的に来る。総量規制をして、同じような人数の中で楽しくすごしてほしい」
さらに組合は、混雑が増す午後5時~午後8時までの来場に「事前の予約制」をとることにした。
この時間帯は日帰り客の来場を「1時間当たり100人に制限する」としている。
(銀山温泉組合・脇本英治組合長)
「我々は銀山温泉の宿泊客を一番に考える。今回の対策も宿泊客の付加価値が上がると考えている」
銀山温泉を訪れた観光客に、トラブルなく最高の思い出を提供するため、手探りでの取り組みが始まる。
(銀山温泉組合・脇本英治組合長)
「小さい温泉街なので、それに合った人数で観光をしてもらうというのが理想。事故・トラブルが少なくなって、混雑した温泉街というより、ゆっくり過ごせる温泉街になることを望んでいる」
銀山温泉で新しい取り組みが始まろうとしている。
しかし銀山温泉の周辺の旅館に話を聞くと、「銀山温泉に日帰りで立ち寄れない」と勘違いした外国人客からのキャンセルが相次いでいるとの声も実際に聞かれる。
銀山温泉は山形を代表する観光地だけに、正しく情報が伝わらないと県内を訪れる人自体が減ってしまう懸念もある。
だからこそ、行政にも温泉組合にも、より丁寧な情報発信が求められるのではないだろうか。