ネパールってどんなとこ?
ネパールは、インドと中国のチベット自治区に隣接する南アジアの内陸国です。世界最高峰のエベレストをはじめ、8,000メートル級の山々を有しています。人口の半分が南部のタライ地域に、43%が中部の丘陵地域に、7%が北部の山岳地域に暮らしています。1996年からおよそ10年にわたって続いた内戦の末、2008年に王制から連邦共和制への移行を宣言。
2018年には連邦・州・地方から成る三層構造の政府運営が開始されました。
同国は2026年までに後発開発途上国から脱却することを目標に掲げ、経済発展と貧困削減に取り組んでいます。
2013年から2023年にかけての年平均成長率(CAGR)は5.6%で、多次元貧困下※にある世帯の割合も30.1%(2014年)から17.4%(2019年)に減少しました。しかしながら、こうした前進は、気候変動とそれがもたらす自然災害、大気汚染をはじめとした環境問題、感染症の流行や大地震などのリスクによって、しばしば脅かされています。
ネパールでは近年、気候変動の影響でモンスーン期が長期化し、洪水や地滑りなどの災害が頻発しています。他方で、乾期には干ばつに見舞われ、飲み水はもちろん、農作物の生産量にも影響が出ています。さらに、巨大地震の発生という地質学的なリスクも抱えています。2023年11月に発生した西部を震源とするマグニチュード6.4の地震では、81人の子どもを含む154名が犠牲になり、20万人が被災しました。こうした災害リスクは特に貧困が深刻な地域で高く、格差を拡大させる一つの要因となっています。
※国連開発計画(UNDP)と英国オックスフォード大学のオックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(OPHI)が2010年人間開発報告書において導入した、貧困を多面的に捉えるための指数。教育・健康・生活水準の3つの次元に含まれる具体的な指標項目に重み付けをして点数を算出し、それが基準値よりも高い場合に貧困と定義される。
支援が必要な理由1 栄養・保健
ネパールの母子保健に関する指標の多くは、この20年ほどで大きく改善しています。
しかし、低カースト層(インドに根付く社会的身分制)や遠隔地の農村部・都市部の貧困地域の子どもたちの最大28%が予防接種を受けていないなど、保健サービスのアクセスの公平性にはまだ課題がのこります。気候変動による気温上昇と降雨量の増加は、マラリア、デング熱、チクングニア熱、日本脳炎といった蚊媒介感染症の蔓延を引き起こします。
豪雨がもたらす洪水もまた、下痢など、汚染された水が原因で生じる水媒介感染症のリスクを増大させています。
近年、ネパールの子どもの栄養状態は改善方向にありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害、世界的な食料危機が脆弱な立場に置かれた人々を再び窮地に追い込んでいます。
1日に推奨される最低限の回数の食事を与えられているのは69%で、5歳未満児の30%が中度または重度の発育阻害状態にあります。
支援が必要な理由2 教育
ネパールではこれまで学習の継続を促すさまざまな取り組みがなされてきたにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、830万人の子どもたちが学びの機会を失いました。コロナ禍で学齢期の子どもの12%が重大な学習損失に直面し、パンデミック後も学校にもどらないという予測もあり、教育への公平なアクセスの推進と、学習損失の回復に向けた取り組みの加速が急務となっています。